最近レットヴィモを導入説明する機会がありました。抗がん剤は新しい薬がどんどん増えて覚えるのが大変ですよね。。。
導入前にレットヴィモについて勉強したので、簡単にですが個人的に必要と思った知識を紹介します。
どんな薬?何のがんに使用する?
レットヴィモ(一般名:セルペルカチニブ)は、2021年12月13日にイーライリリーから発売された内服薬剤で、『RET受容体型チロシンキナーゼ阻害剤』に分類されます。
2023年2月現在の適応は、以下の3つです。
- RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
- RET融合遺伝子陽性の根治切除不能な甲状腺癌
- RET遺伝子変異陽性の根治切除不能な甲状腺髄様癌
規格は40mg、80mgの2種類でこんな見た目です↓
飲み方、飲み忘れた時の対応
どの適応でも大人には、1回160mgを1日2回で使用。
甲状腺がんでは、12歳以上に小児用量あり。⇒小児用量は1回約92mg/m2を1日2回経口投与する。
メーカー作成の患者用冊子には、食事の前後どちらでも内服可能で、飲み忘れた場合は次の服用時間までに6時間以上の間隔があれば内服可能と記載あり。
食事の影響と、飲み忘れた時の対応が記載されているのはありがたいですね。
レットヴィモの服用方法
RET肺がん*でレットヴィモを服用される患者さんとご家族へ
忘れずに測ろう心電図
レットヴィモの副作用にはQT間隔延長という心電図異常があります(添付文書上では14.5%と高めの頻度)。
なので、レットヴィモの適正使用ガイドには、このQT間隔延長を見逃さないために、レットヴィモ投与前、投与開始後に心電図と血清電解質検査(K、Mg、Ca等)を測定するように書かれています。
私が導入依頼を受けた時、患者さんの血清電解質は測定済みでしたが、心電図検査のオーダーは入ってなかったので、私から主治医へ『QT延長の副作用がでることがあるみたいです~開始前の心電図の測定いかがですか~』と聞いて測ってもらいました。
新しい薬とか使用頻度の少ない薬は、先生も慣れるまで必要な検査オーダーが抜けたりしますよね。診察が忙しいと余計に抜けます、、、薬剤師がそこを忘れないようにフォローしたいですね。
ちなみにレットヴィモ投与開始前は、QTc間隔が470msec以下でないといけないみたいです。
投与開始後の心電図検査は、『1週間後』⇒『投与から6か月までは月に1回』⇒『6ヶ月目以降は必要に応じて』行うことが推奨されています。
その時にQTc間隔が500msecを超える場合は、QTc間隔が470以下に回復するまで休薬が必要とされ、回復後は1段階減量して投与再開可能。2段階減量した用量で投与中に再発した場合は投与を中止となっています。
推奨されるQTc及び血清電解質のモニタリング
レットヴィモ適正使用ガイド 注意すべき副作用とその対策 推奨されるQTc及び血清電解質のモニタリング
CYP3A4で代謝されるし、pHの影響も受けやすい、、
レットヴィモの添付文書には、『主にCYP3A4によって代謝され、CYP2C8及び3Aの阻害作用を示す。また、本剤の溶解度はpHの上昇により低下する』と記載されています。
嫌ですよね、CYP3A4は、、、グレープフルーツ等の3A4を阻害する柑橘類は避ける必要があります。
そして気になったのは、pHの上昇でレットヴィモの吸収も低下してしまうというとこ。。。
添付文書の相互作用には、pHに影響を与える胃薬(プロトンポンプ阻害剤、H2受容体拮抗薬、制酸剤)は可能な限り避けるように記載されています。飲んでる人多いですよね、、、、、
やむなく併用が必要な場合も、それぞれ対応方法が載っていますのでそこはありがたいです。
レットヴィモの相互作用(一部抜粋してます)
レットヴィモ 添付文書
副作用は何が出る?
添付文書の『重要な基本的注意』に書かれている以下の4つ、
- 肝機能障害
- QT間隔延長
- 高血圧
- 間質性肺疾患
には注意が必要です。
肝機能障害は採血、QT延長は心電図でモニタリングできそうでしょうか。
高血圧も出るため自宅血圧の測定・記録を指導する必要がありそうですね。
間質性肺炎の初期症状(発熱、空咳、息切れ等)が出た際の早めの相談も必要です。
その他、添付文書に20%以上で載ってる頻度の高い副作用は、
- 口腔内乾燥
- 下痢
- 疲労
- 浮腫
となっています。
肝障害や腎障害の時の投与は可能?
肝障害
レットヴィモの適正使用ガイドを参考にすると、肝障害時の投与に関しては以下のように記載されています。
Q:肝機能障害患者への投与は可能か?安全性は?
A:軽度又は中等度の肝機能障害のある患者(Child-Pugh分類A又はB)には、用量を調節する必要はありません。ただし、重度の肝機能障害のある患者(Child-Pugh分類C)では、本剤の血中濃度が上昇し、副作用が増強されるおそれがあります。減量を考慮するとともに、患者の状態をより慎重に観察し、副作用の発現に十分注意してください
レットヴィモ適正使用ガイド 適正使用のためのQ&A
少々肝機能が低下しているくらいでは、減量しなくてもよさそうですね。
腎障害
次に腎障害時の投与について見てみると、適正使用ガイドでは以下の通りです。
Q:腎機能障害患者への投与は可能か?安全性は?
A:尿中排泄は主な排泄経路ではなく、用量を調整する必要はありません。
レットヴィモ適正使用ガイド 適正使用のためのQ&A
軽度、中等度及び重度の腎機能障害被験者を対象に薬物動態に及ぼす影響を検討した試験では、臨床的に意味のある影響は及ぼさないことが示されています。なお、末期腎不全患者に関するデータはありません。
腎機能低下時も、腎不全でもない限り用量調節の必要はなさそうですね。
まとめ
レットヴィモ(セルペルカチニブ)はRET受容体型チロシンキナーゼ阻害剤であり、
・RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
・RET融合遺伝子陽性の根治切除不能な甲状腺癌
・RET遺伝子変異陽性の根治切除不能な甲状腺髄様癌 の3つの適応がある
1回160mgを1日2回で内服。食事の前後どちらでも内服可能。飲み忘れた場合は次の内服まで6時間空いてれば内服可能。
投与前の心電図検査、投与後の定期的な心電図検査は忘れないように。
CYP3A4で代謝を受けるため、3A4を誘導・阻害する薬剤との併用は注意。pHを上昇させるような薬剤との併用で効果減弱の可能性あるため胃薬との相互作用は注意。
肝機能障害、QT間隔延長、高血圧、間質性肺炎に注意。
口腔内乾燥、下痢、疲労、浮腫の頻度も高い。
軽度~中等度の肝障害、腎障害があっても減量の必要なし。
以上、レットヴィモについてでした!最後まで読んでいただきありがとうございます!
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