薬の勉強しててへぇ~と思った内容を書いていきます。
今回は胃薬として様々な場面で使われるPPIが食事の影響を受けるかについて考えてみました。
結論から言うと、PPIは食後の内服ではなく食前や、空腹時に内服した方が効き目がいいかも?ということです。理由について考えていきましょう。
食後の胃酸が多く出てる時にPPIの血中濃度が高い方が望ましい
なぜ食後より空腹時や食前内服のほうが良いのか。
参考情報として以下のような記載がありました。
プロトンポンプは壁細胞が休止期のときには細胞質内で管状小胞の膜上に存在しているが,食事等による酸分泌刺激により管状小胞が分泌細管側へ移動し,分泌細管膜上に出現したプロトンポンプから酸が分泌される.PPI は分泌細管内での酸により活性化され,活性化された PPI が分泌細管膜上のプロトンポンプと共有結合し酸分泌を抑制する.最大の PPI の効果を得るためには,食後に分泌細菅内の PPI の血中濃度を最も高くすることが必要である.
逆流性食道炎患者における PPI 治療のコツ 日医大医会誌 2016; 12(4)
PPI の血中濃度が内服後 2~3 時間で最も高くなることを考えると,食前 60 分前投与が有効である.また,PPI の内服時間に関しては,本邦では一般的に食事の摂取量は夕食が最も多く,夕食後に多くのプロトンポンプが分泌細管膜上に出現していることから,PPI の夕食前投与が有効である.
PPIは食事の15~30分前に内服することで胃酸分泌の抑制効果が高まる。PPIを服用している100人の逆流性食道炎の患者を対象とした最近の調査では、最適な投与方法(食前1時間以内)で投与しているのは46%程度。
Best Pract Res Clin Gastroenterol. 2013 Jun; 27(3): 401–414.
食後の胃酸が出ているタイミングで、PPIの血中濃度が最大になっていることが大事ということのなので食前や空腹時にPPI飲んで血中濃度を上げておきましょう、といった考えですね。
どれくらい前から飲んだらいいかは報告によって分かれていますが、実際に飲んでもらうとしたら食事の1時間~30分前の内服が目安でしょうか。
薬剤師の転職ならジョブデポ薬剤師PPIは食後より絶食時に内服した方が血中濃度が高く推移する
日本医事新報社のページでは、エソメプラゾール(ネキシウム)、ランソプラゾール(タケプロン)、ラベプラゾール(パリエット)について以下のような情報がありました。
下の図を見ると血中濃度は絶食時の方が高い傾向にあります。ただタケプロンやパリエットのインタビューフォームを見ると製薬メーカー的には食事の影響はないと考えてるようでした(個人的にはありそうな気もしますが)。
1) Junghard O, et al:Eur J Clin Pharmacol. 2002; 58(7):453-8.
2) タケプロンRインタビューフォーム. 2013.
3) パリエットRインタビューフォーム. 2015.
実際の処方でも、PPIは添付文書上は1日1回、経口投与と記載されていますし、食事の前後の指定はないですよね。
通常は食後で処方されることが多いかと思います。
今回の情報をどう使っていくか
今回調べた情報によると、食前や眠前などの空腹時に飲んだ方が効き目がよくなる可能性がある、と考えてもよさそう(実際に論文で食前内服の方が明らかに効き目が良かった!みたいなのがあればよりいいのですが今のところはないのかな)。
ただ製薬メーカー的には用法に食前後の指定はなく、食事による大きな影響はない、とされていそうなので、食後投与でも悪いとは言えず、わざわざ疑義紹介するほどではない。
もしPPIを食後に飲んでる患者さんで、『胃薬飲んでるけどあんまり効いてるかわからないんだよね~』みたいな訴えがある方には試しに食前(30分前くらい)や眠前で飲んでみませんか?としてあげてもいいかも。
また、日中の胃酸分泌を抑えたければ起床時や朝食前に、夜間の胃酸分泌を抑えたければ夕食前や眠前に内服を提案してみたらいいのかもですね。
最後まで読んでいただきありがとうございます。何か日々の業務の中でお役に立てれば幸いです。
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