未分類

CT、MRI検査前に気をつける薬剤(ビグアナイド系薬剤、β遮断薬)について考える

造影検査前の注意する薬
hikonari

造影剤を使った画像検査前の中止薬剤にビグアナイド系薬剤(メトホルミンなど)がありますね。他には飲んでることを把握しておきたい薬剤にβ遮断薬(ビソプロロールなど)があります。

この記事では、

  • 画像検査前のビグアナイド系薬剤の止める理由、止める時期
  • 造影剤の種類によっては止めなくてもいい場合があるか
  • β遮断薬を飲んでいると何が問題になるのか

について考えてみます。

乳酸アシドーシスのリスクを防ぐためにヨード造影剤使用前にはビグアナイド系薬剤は中止する

中止する理由としては、ビグアナイド系薬剤+ヨード造影剤で、乳酸が体内に蓄積しやすくなり、乳酸アシドーシスになるリスクが上昇するためです。

ではヨード造影剤を使う日の何日前からビグアナイド系薬剤を止めた方がいいのか。

ビグアナイド系薬剤であるメトグルコの添付文書には、

「ヨード造影剤を用いて検査を行う患者においては,本剤の併用により乳酸アシドーシスを起こすことがあるので,検査前は本剤の投与を一時的に中止する(ただし,緊急に検査を行う必要がある場合を除く).中等度以上の腎機能障害で禁忌」

「ヨード造影剤投与後 48 時間は本剤の投与を再開しない.なお,投与再開時には,患者の状態に注意する」

となっています。

検査前はどれくらい前から止めるかはっきり書いてないですが、

私ヒコナリの施設ではヨード造影剤を使用する画像検査前(造影CTや心臓カテーテル検査等)には、ビグアナイド系薬剤を検査前後48時間(検査日を含めた合計5日間)中止すること、としています。

個人的にはヨード造影検査の前後48時間は止める、と決めている施設は多い印象です。

腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018のCQ③—8には、少し詳し目に書いているので参考にしてみるといいかも。

CT検査はヨード造影剤、MRI検査はガドリニウム造影剤が使われる

CT検査で造影剤を使う場合はヨード造影剤が使われるため、ビグアナイド薬剤の中止が必要です。

一方で、MRI検査はヨード造影剤ではなく一般的にガドリニウム造影剤が使われます。その場合ビグアナイド系薬剤は中止しなくてもよいとされています。

『造影剤使用=ビグアナイド中止』ではなく、CT検査のようなヨード造影剤を使う検査なのかどうかによって、ビグアナイド系薬剤の中止の必要性を判断する必要があるようです。

造影前にはβ遮断薬にも注意が必要

造影剤を使うときにβ遮断薬を内服していると何が問題になるのでしょうか。

造影剤の使用では稀にアナフィラキシーショックがおきます。その場合、アナフィラキシーショックの第一選択薬であるアドレナリン(エピネフリン)の注射を行いますが、β遮断薬の内服中は、アドレナリンの効果を減弱することが報告されています。

ではβ遮断薬内服中の患者はアナフィラキシーショックが起きた場合どうするのか。

まずアドレナリンを使用し、効きが悪ければグルカゴンが使用されることがあるようです。

β遮断薬内服中の患者では、アナフィラキシーショックが重篤化しやすい。β遮断薬内服患者のアドレナリン抵抗性アナフィラキシーショックにおいて、グルカゴンはβ受容体を介さずに心筋細胞内のcAMP濃度を上昇させることで効果を発揮するとされる 日集中医誌 2021;28:126-7.

この文献ではグルカゴンの投与方法については、確立されたものがなく、

筒井らは、グルカゴン1mgを2回i.v.したところ、翌日にはショックを離脱

Zalogaらは、グルカゴン1mgを2回i.v.し血圧上昇したものの、1時間後に血圧低下したため、1mg/hrで持続静注を開始し、約5時間でショックを離脱

したことを報告している、とされています。

当院でも造影CT前の薬のチェックでβ遮断薬(カルベジロール、ビソプロロール、アテノロール等)を使っているかを確認し、使用中であればグルカゴンの用意をしておくように看護師さんへお伝えしています。

まとめ

  • ヨード造影剤を使う検査+ビグアナイド系薬剤は乳酸アシドーシスのリスクが上昇するため、検査前、検査後48時間はビグアナイド系薬剤を中止する。
  • 造影CT検査では主にヨード造影剤、MRI検査ではがドリニウム造影剤が使用される。ビグアナイド系薬剤はヨード造影剤を使うときにのみ止める、
  • β遮断薬内服中はアナフィラキシー発生時に使うアドレナリンの効果を減弱する可能性がある。その場合、グルカゴンで対応することがある。
記事URLをコピーしました