今回は、『添付文書の相互作用欄』に載ってないけど、併用を避けた方がいい薬のお話です。
避けた方がいい組み合わせは、アロマターゼ阻害剤+SERM(選択的エストロゲン受容体調整薬)の組み合わせになります。
結論から言うと、アロマターゼ阻害剤+SERMの併用で、有害事象の増加と乳癌再発抑制効果阻害の可能性が示されています。
なんかすごーく悪そうに聞こえる組み合わせですよね。。。
ちなみにアロマターゼ阻害剤は、術後ホルモン療法としてレトロゾール(商品名:フェマーラ)やアナストロゾール(商品名:アリミデックス)がよく使用されます。
一方でSERM(選択的エストロゲン受容体調整薬)は、バゼドキシフェン(商品名:ビビアント)やラロキシフェン(商品名:エビスタ)があり、閉経後女性の骨粗鬆症治療薬として使用されています。
以下に少し詳しく解説します。
アナストロゾールとタモキシフェンを併用した試験(ATAC試験)
なぜ、アロマターゼ阻害剤とSERMをさける必要があるのか、その根拠になった試験にATAC試験があります。
乳がん診療ガイドライン2022には以下のような記載があります。
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)であるラロキシフェンは閉経後女性における骨粗鬆症の治療薬として挙げられる。しかし,ATAC試験において,同様のSERMであるタモキシフェンとアナストロゾールの併用で有害事象の増加と乳癌再発抑制効果阻害の可能性が示されており24),アロマターゼ阻害薬使用時のラロキシフェン併用は避けるのが妥当である。
24)Anastrozole alone or in combination with tamoxifen versus tamoxifen alone for adjuvant treatment of postmenopausal women with early breast cancer:first results of the ATAC randomised trial. Lancet. 2002;359(9324):2131-9. [PMID:12090977]
乳がん診療ガイドライン2022
私にはこの文章の意味が、初めて見た時には少しわかりにくかったですが、3回くらい繰り返し読むと理解できました。
機序の異なるタモキシフェンとアナストロゾールを併用すれば乳がん再発抑制効果は高まりそうな気がするのに実際は抑制してしまうという残念な結果に、、、
タモキシフェンはSERMですが、バゼドキシフェンやラロキシフェンも同じSERMに分類されます。
ということは、アロマターゼ阻害剤(アナストロゾール、レトロゾール)+SERM(バゼドキシフェン、ラロキシフェン、タモキシフェン)の組み合わせは避けた方が良いよね、ということですね。
う~ん、書いていてとても伝わりにくい気がします、、、すいません、、
とりあえずこの相互作用は添付文書にも載っていないので注意が必要です。
アロマターゼ阻害剤導入時には、患者さんの内服中の薬剤にSERMがないかしっかり確認しましょう。
私は何度か、アロマターゼ阻害剤導入時に、患者さんの持参薬中にSERMを確認したため変更してもらったことがあります。
すでにSERMを飲んでいる場合は他剤へ変更を
アロマターゼ阻害剤導入時に、すでに患者さんが骨粗しょう症治療薬としてSERMを内服中であれば、SERMを別の薬剤へ変更も検討します。
切り替える薬剤としては、『ビスホスホネート製剤の内服』、もしくは『デノスマブの注射』あたりに変更して、治療継続した患者さんを何人か経験しています。
SERMを変更ではなく、中止するだけではダメでしょうか。。
個人的にはSERM中止後は、別の骨粗鬆症の治療薬を使った方が望ましいと考えられます。
なぜかというと、SERMを飲んでいる患者さんは、骨粗鬆症リスクがある方と予想できます。
アロマターゼ阻害剤の副作用に骨粗鬆症がありますので、SERMの代わりになる骨粗鬆症治療薬なしだと、骨粗鬆症リスクが上がってしまう可能性があります。
SERMを中止するだけではなく他剤へ変更も検討してはいかがでしょうか。
ちなみにですが、骨粗鬆症リスクが高~い患者さんには閉経後でも骨塩低下リスクのないタモキシフェンをあえて使う場合もあります(SERMは骨には良い働きをしますね)。
まとめ
- アロマターゼ阻害剤+SERMで有害事象の増加、乳癌再発抑制効果阻害の可能性が報告されているため避ける方が無難。
- SERM内服中であれば、ビスホスホネート製剤やデノスマブなど他剤への変更も考慮する
以上、乳がんのホルモン療法中の相互作用のお話でした。
乳がんのホルモン療法中の注意すべき相互作用としてはタモキシフェン+パロキセチンも有名です。
気になる方はそちらも一緒に参考にしてくださいね!
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