がんの勉強

irAE心筋炎の検査、治療を考える

IrAE心筋炎の検査、治療について考える
hikonari

いろんながんの治療で頻繁に使われるている免疫チェックポイント阻害薬(ICI)。

このICIの投与で発現してしまう免疫関連有害事象(irAE)。

頻繁にはおこらないけど、おきてしまうとやっかい。。。。

今回はこのirAEのなかでも致命的な経過をたどることがある『irAE心筋炎』についてお勉強です。

irAE心筋炎の発現頻度と特徴

irAE心筋炎とはどんなかんじなのか簡単に以下にまとめました。

  • ICI投与による心筋炎発現頻度は0.09~1.14%と低い
  • 発現時の死亡率は25~50%であり、irAEのなかでもめちゃ死亡率高い
  • 発現時期の中央値はICI初回投与から34日、81%が3か月以内
  • ICI単剤よりICI併用療法で発症率、重症度が高いとの報告もある
  • ICIによる心筋炎は筋炎や重症筋無力症を併発することがある
  • 心筋炎に特異的な症状や身体所見はなく、無症状の患者も存在する。そして急速に悪化する。

いや、無症状て、、、、厄介すぎるやろ、、、

どうやって気付く?irAE心筋炎のスクリーニング検査

ちゃんと検査で気付けるみたいです。以下に要点をまとめます。

  • 海外の後ろ向き研究では、irAE心筋炎を発症した35例のうち94%でトロポニン上昇89%で心電図(ECG)異常が認められた。
  • 左室駆出率(LVEF)の異常が49%NT-ProBNPの異常が66%で認められた。

ということで、

ICI投与前には、心電図(ECG)、トロポニン、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の測定を行ってベースラインがどれくらいか見ておく。

そこで異常があれば、心エコーを行うことが望ましいとされている。

ICI投与前のベースラインを知っておくことが大事なんですね。

ICI開始後は、どれくらいの頻度で心筋炎の検査をするのか。

欧州の心臓病学会(ESC)が関連学会と共に作成した『腫瘍循環器学の診療ガイドライン2022年版』では以下のように推奨しています。

  • ICI投与4サイクル目までは毎回ECGとトロポニンの測定(実際は月1回くらいが現実的でしょうか)
  • その後は3サイクルごとにECG、トロポニン測定
  • ICI投与1年以上経過した場合は、6か月~12か月ごとに心血管機能評価、ECG、BNP/NT-ProBNP測定

これをもとに自施設で検査のスケジュールを決めてみてもいいかもしれませんね。

ベースラインと比較して変化や異常を認めたら速やかに循環器専門医へコンサルトして心筋炎の診断、治療を開始することが重要みたい。

irAE心筋炎の治療 基本はステロイドパルス

『腫瘍循環器学の診療ガイドライン2022年版』では、

  • 心筋炎と判断したら重症度に関わらずICIを中止
  • 入院化でECGを装着して、心筋炎の判断から24時間以内にステロイドパルス開始(メチルプレドニゾロン500~1000mg/Dayを3~5日の静脈投与)
  • ステロイドパルス開始から24~72時間以内にトロポニン値がピークから50%以上の低下すれば効果ありと判断して経口プレドニゾロン1mg/kg/Dayに変更。
  • トロポニンが低下していることを確認しながら10mg/週程度の間隔で漸減する。
  • ステロイド抵抗性の場合は二次治療としてその他の免疫抑制薬を検討する。

とされています。

心筋炎以外のirAEも治療のほとんどは迷わずに十分量のステロイドの使用が基本ですよね。

ステロイド開始後に反応がない場合、、、

irAE治療ガイドライン(NCCN Guideline. Version 3.2023)におけるステロイド治療抵抗性病態の治療選択肢には、

  • アバタセプト(オレンシア®︎)
  • MMF(セルセプト®︎)1~2g/Day
  • IVIG(総量2g/kgを適宜分割して投与)
  • アレムツズマブ(マブキャンパス®︎)
  • インフリキシマブ(レミケード®︎:LVEF低下時は厳重に注意しながら)
  • ATG(抗胸腺グロブリン)
  • 血漿交換

などが記載されています。

ATGとかなんぞ?初めて見ました、、、

irAE治療の治療で使うステロイド、免疫抑制薬の使い方、ステロイド以外の選択肢等の勉強は個人的に以下の本が最適でした(ちょっと難しいページもあるけどね)。

分厚くないしポケットサイズですし。

まとめ~

irAE心筋炎、早期発見できるようにICI開始前に心電図、トロポニン、BNP等がしっかりオーダーされているか確認しましょう!

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