アスピリンやロキソプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に対して、過敏症のある患者さんに遭遇することはありませんか?
過敏症には、NSAIDsを使用した時に喘息発作が出る『喘息型』や、蕁麻疹で出る『蕁麻疹型』の大きく2つに分けられます。
このような過敏症を持ってる方の痛みを抑えたいけどNSAIDsは使いにくい、、、どうすればいいのか、、、
今回は、そのようなNSAIDs過敏症の方に使用しやすい鎮痛剤について考えてみます。
どの鎮痛剤が比較的安全に使えるのか
調べてみたところ、厚生労働省のWebページで見ることが可能な重篤副作用疾患別マニュアルに、NSAIDs過敏症の方に各種NSAIDsを使う場合の危険度分類がありました。
以下、参考画像になります。
重篤副作用疾患別対応マニュアル(非ステロイド性抗炎症薬による蕁麻疹/血管性浮腫)より抜粋
表中では『安全』に使用できる薬剤として、COX1阻害作用が全くないペンタゾシン、モルヒネが載っていますね。
しかし、どんな痛みにも使えるという訳ではなく、薬剤の適応や疾患は考慮して使用する必要がありそうです。
実際に使用されることが多いのは、表中の『ほぼ安全』とされている薬剤(アセトアミノフェンやCOX2阻害剤など)での対応が多いのではないでしょうか。
重篤副作用疾患別対応マニュアルの文中には、以下のように記載されています。
アセトアミノフェンは、従来は安全とされたが、米国の N-ERD (アスピリン喘息)患者において1,000〜1,500mg/回負荷で 34%が呼吸機能低下を示した報告があり 、欧米では500mg/回が推奨され、日本人では 300mg/回以下にすべきである。
重篤副作用疾患別対応マニュアル非ステロイド性抗炎症薬による喘息発作(アスピリン喘息、解熱鎮痛薬喘息、アスピリン不耐喘息、NSAIDs 過敏喘息)より抜粋
漢方薬の葛根湯や地竜などは安全である。選択的 COX-2 阻害薬であるセレコキシブは倍量投与でも N-ERD で発作が起きないことが確認されており 、国際的にも、タスクフォースメンバーから安全と提言されている。ただし添付文書には、アセトアミノフェンもセレコキシブも N-ERD(アスピリン喘息)に禁忌と記載されており、処方は主治医の責任となる。
COX1への阻害作用がほとんどない薬剤は『ほぼ安全』となっていますが、添付文書上では、『アスピリン喘息またはその既往歴のある患者』は、禁忌となっていますので、把握した上で薬剤を選択する必要がありそうです。
アスピリン喘息という誤解を招く名前⇒NSAIDs喘息へ変更の流れ
NSAIDs過敏症である喘息型はアスピリン喘息と言われていました。
この前を聞くとNSAIDsのなかでアスピリンだけ注意してたらいいの?と思ってしまいそうですが、アスピリン以外のNSAIDsでも喘息は誘発されるため注意が必要とされていますね。
厚生労働省の重篤副作用疾患別マニュアルでも、以下のように書かれています。
古くはアスピリン喘息(AIA)と称されてきたが 、近年は国際的に aspirin-exacerbated
重篤副作用疾患別対応マニュアル非ステロイド性抗炎症薬による喘息発作(アスピリン喘息、解熱鎮痛薬喘息、アスピリン不耐喘息、
respiratory disease(以下、AERD)と呼ばれることが多い 。最近では、欧州アレルギー学会メンバーを中心とした国際タスクフォースにより、NSAIDs-exacerbated respiratory disease(以下、N-ERD) という用語が提唱され、主流になりつつある 。この名称変更は、アスピリンのみによって誘発される過敏症と誤解されることが多いため、N-ERD と変更された経緯がある。よって本邦でも、アスピリン喘息ではなく、解熱鎮痛薬(過敏)喘息、あるいは NSAIDs 喘息と呼ぶ方が望ましい。
NSAIDs 過敏喘息)より抜粋 一部改変
紛らわしい名前が少しスッキリしましたね!
まとめ
NSAIDs過敏症にも比較的安全に使用できる鎮痛剤は複数存在しています。
個人的には、重篤副作用疾患別対応マニュアルで記載されている『ほぼ安全』に該当する薬剤(セレコキシブ、アセトアミノフェン)が実臨床ではよく使用されている印象です。
ただし、添付文書上ではアスピリン喘息に禁忌となっているため、主治医と十分に協議したうえで使用することが望ましいと考えられます。
以上となります。少しでもお役に立てる情報があれば幸いです。
他にこんな薬剤が使われるよ!といった情報があればお待ちしてます。
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